Coch-y-Bonddhu,
Coch-y-Bonddhu, Halford

フライフィッシング用語辞典

Fly Fishing Dictionary


Wasp
Wasp Fly, Berners
   
いぶせ・ますじ(井伏鱒二) 《人》
 日本人、小説家、エッセイスト、釣り人。1898−1993。広島県生まれ。代表作には、「山椒魚」(1929)、「ジョン万次郎漂流記」(1938)、「本日休診」(1950)、「黒い雨」(1966)、名翻訳の誉れが高いドリトル先生シリーズなどがある。文化勲章受章者。稀代のストーリー・テラー、日本語の天才、などといわれる。
 釣りが好きで、鱒二というペンネームを使った。本名は満寿二。昭和5年、32歳ごろから佐藤垢石を師として釣りを本格的に始めた。主として餌釣りだが、日光湯川でウェットフライの釣りもやっている。釣り、魚に関する随筆が多く、「川釣り」(1952)、「釣師・釣場」(1960)、「コタツ花」(1963)、「釣人」(1970)、「荻窪風土記」(1982)、などがある。釣友に丸岡明、丸山泰司、福田蘭童、太宰治、小田獄夫、瀧井孝作、亀井勝一郎などがいた。小説と釣りの弟子(?)に開高健がいる。
 釣りにはかなりのめり込み、釣りの本質、釣り人の世界を巧みな文章で綴り、釣りエッセイの頂点をきわめたと言っていいだろう。井伏はある老釣り師に言われた"川に喰らいつかなくちゃいけねえ"ということばをしばしば紹介している。
【資料】日本の名随筆, 1982. 釣師・井伏鱒二, 1991 (1989). 随筆集「釣人」, 1970.
 
 
イマージャー emerger:英語 《昆虫》
 "emerge、イマージ"は、現れる、出てくるという意味。イマージェンスemergenceは羽化hatchの瞬間といっていいだろう。
 イマージャーは水生昆虫が水中から空中に出てくる、ニンフ/ピューパから脱皮して翅が完全に伸びきるまでの段階の呼び名である。ダグ・スウィッシャー/カール・リチャーズは「水面でアダルトが体半分が空中に出て、体の後ろ半分がニンフ/ピューパのシャックに入っている状態」のイミテーション・パターンをイマージャー・パターンと呼んでいる。
 イマージャーという表現を初めて世に出したのはダグ・スウィッシャー/カール・リチャーズであろう。彼らは"Selective Trout"(1971)でもイマージャーという表現を使っているが、水槽での羽化観察を含めた長年の研究の成果を好著"Emergers、イマージャーズ"(1991)で発表した。この本にはカゲロウだけではなく、各種の水生昆虫の羽化前後の状況が詳しく述べられ、それに対応したフライ・パターンが書かれている。どんな水生昆虫でもイマージェンスとその前後の段階がもっとも魚に狙われやすいので、釣り人に理解しやすいように整理した業績は大きい。
 カゲロウを例にとると、多くのカゲロウのニンフは水面に上がってきて、水面直下を流されつつ羽化が起こり、ダンになる。羽化の最中にはカゲロウは自分で自由に動くことができずに流されている状態なので、魚に捕食されやすい。したがって、このイマージャーあるいはイマージング・ダンを模倣したフライ、すなわちイマージャー・パターンはフライフィッシングではきわめて重要なものとなるわけである。
 スウィッシャー/リチャーズは"Fly Fishing Strategy"(1975)でスティルボーン・ダンstillborn dunという概念を主張したが、のちの"Emergers"(1991)ではイマージング・ダンemerging dunという呼び名に変えている。カゲロウ、トビケラ、カワゲラ、ミッジを含めて変態のある時期をイマージェンスemergenceというわかりやすい概念でとらえ、釣り人に示したのだった。
 なお、歴史的にはヴァーノン(通称ピート)・ハイディVernon(Pete) S. Hidyが1963年に作ったフリンフflymphという造語はイマージャーを意味していたことは間違いないだろう。
【資料】Emergers, 1991. Selective trout, 1971.
→フローティング・ニンフ、スティルボーン、セレクティブ・トラウト、フリンフ
 
 
 
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マダラ(ヤマメ)の尾ビレ、熊本県五家荘にて
マダラ(ヤマメ)の尾ビレ、熊本県五家荘にて
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